定時決定は、毎年7月1日にその事業所において使用されているすべての被保険者を対象として行われます。ただし、以下に該当する被保険者は、定時決定の対象者にはなりません。
①6月1日から7月1日までの間に、被保険者の資格を取得した者
②7月から9月までの間に、標準報酬月額の改定(随時改定、育児介護休業等を終了した際の改定もしくは産前産後休業を終了した際の改定)を実施、または実施されるべき被保険者
定時決定から除外される②の随時改定とは、昇給または降給など被保険者の報酬が著しく変わったときは、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定する手続きです。随時改定は次の要件をすべて満たした場合に行われます。
ア)昇給または降給などにより固定的賃金に変動があったこと
イ)固定的賃金の変動月以後の継続した3か月間の支払基礎日数がすべて17日以上であること
ウ)イ)の3か月間の報酬総額を3で除した額の標準報酬月額等級と、現在の標準報酬月額等級との間に2等級以上の差が生じていること
ア)の固定的賃金の変動とは、基本給の昇給・降給の他、
・給与体系(例えば時給制から月給制へ)の変更
・時間給、日給などの基礎単価の変更
・歩合給などの単価、または歩合率の変更
・家族手当、通勤手当などの固定的な手当の追加、または支給額の変更
など支給額や支給率が決まっているものをいいます。
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さて、この随時改定ですが、遡って昇給をした場合はどのように行うのでしょうか。
厚生労働省「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」には、
遡って昇給が発生した場合、その変動が反映された月(差額調整が行われた月)を起算月として、それ以後継続した3か月間(いずれの月も支払基礎日数が17日以上)に受けた報酬を基礎として、保険者算定による随時改定を行う
と説明されています。
例えば、人事考課の結果、6月支給分から昇給が始まり、4月支給分および5月支給分の2か月分も、合わせて6月で支給した場合がこの取り扱いになります。固定的賃金の変動は6月であり、6月からの3か月間の標準報酬月額等級にて2等級以上の差を確認します。
一方、もともと4月支給分からの昇給が決定していたにもかかわらず、給与担当者が忘れていた場合は、この取り扱いとは異なります。この場合は、昇給が決定していたのは4月、すなわち固定的賃金の変動は4月であって、4月から3か月間の標準報酬月額等級にて2等級以上の差を確認します。
同じような事例として、従業員から住所変更の届け出が遅れたことにより、遡って住宅手当や通勤手当の支給額を変更する場合も、その事実があった月からの3か月です。支給することになった月からではありません。注意しましょう。