就業規則の法的効力

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就業規則の法的効力について、就業規則と、法令や労働協約、労働契約との関係を、労働基準法の条文から見ていきます。

(法令及び労働協約との関係)                                      第92条 就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。          2 行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。

第2項に「法令又は労働協約に抵触する就業規則」とありますので、就業規則は、法令や労働協約との関係では劣後ということになります。

なお、変更命令は、労働基準監督署長が行いますが、労基署長が就業規則を変更するものではありません。

あくまで、使用者(事業者)に対して変更すべき義務を課すものです。

次に、労働契約との関係です。

(労働契約との関係)                                          第93条 労働契約と就業規則との関係については、労働契約法第12条の定めるところによる。

今度は労働契約法を見ます。

(就業規則違反の労働契約)                                       第12条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

就業規則で定める基準に達しない労働条件、すなわち基準より低い労働条件は無効であり、その部分は基準である就業規則の労働条件にしなさい、ということですから、就業規則は労働契約よりも優先する関係であることがわかります。

よって、これらの労働規範は、(法令)>(労働協約)>(就業規則)>(労働契約)の優先劣後関係になります。

また、第12条の基準に達しない就業規則との関係に続いて、法令、労働協約についても同様に規定しています。

(法令及び労働協約と就業規則との関係)                                 第13条 就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第7条、第10条及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。

第7条は、使用者が合理的な労働条件である就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は就業規則で定める労働条件とする規定です。

また、第10条は、使用者が就業規則を改定し労働条件を変更する場合は、変更後の就業規則を労働者に周知させた上で、なおかつ就業規則の変更が、(1)「労働者が被る不利益の程度」、(2)「労働条件の変更の必要性」、(3)「変更後の就業規則の内容の相当性」、(4)「労働組合等との交渉の状況」、(5)「その他の就業規則の変更に係る事情」、に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は当該変更後の就業規則の規定によるというものです。

労働条件は、使用者と労働者の合意によって変更することができます。

労働条件は就業規則に定められており、使用者がその就業規則を改定する(労働者にとって不利益変更となる)場合は、その5つの要素が求められます。

改定のため労使協議を行い周知するという「内容」と、労働者過半数代表者の意見書を付して労働基準監督署長へ届け出る「手続き」は、両方とも必須であるとともに、全くの別物であることを念頭に置かなければなりません。

例え届け出ていたとしても、労働者の周知がされておらず、また5要素が否定されることになれば、就業規則に定める当該労働条件が否定されることにもなりますのでご注意ください。