シフト制とは、パートタイム、アルバイトなどの労働日、労働時間を、シフト表によって決定する勤務体系です。
労働契約を締結するときには、労働日、労働時間を確定せず、一定期間ごとに作成される勤務シフトによって、具体的な労働日、労働時間が確定するため、労働者にとっては柔軟な勤務が可能となり、使用者にとっては営業等の状況に応じた人材配置が可能と、双方にメリットがあります。
シフト制は便利な反面、労働者が希望する日数や時間以上にシフトが設定されたり、その反対に設定されなかったりと、長期化するコロナ禍でもありこうした相談が増加傾向にあります。
シフト制による労働契約で留意すべき点です。
(1)始業・就業の時刻について
労働条件通知書に「シフト制による」と記載するだけでは不十分です。原則的な始業・終業時刻を記載した上で、すでに決定済みの一定期間分のシフト表を添付して労働者に交付しなければなりません。
(2)休日について
労働契約の締結時に確定している場合は、労働条件通知書にこれを明示しなければなりません。具体的な休日までは確定していない場合は、休日を決定するにあたっての原則的な考え方を明示しなければなりません。労働基準法第35条に「毎週少なくとも1回または4週間を通じて4日以上」と規定されています。少なくてもこの規定の内容について明示する必要があります。
(3)労働日、労働時間設定の基本的な考え方
基本となる労働日数、労働時間について、使用者と労働者で話し合い、合意しておく必要があります。労働契約法第3条第1項に「労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し又は変更すべきもの」と規定されています。シフト制の労働契約であってもこの規定は当然に適用されます。
◇一定期間において、労働する可能性がある最大の日数、時間数、時間帯 ・・・例:「毎週月・水・金曜日から勤務する日をシフトで指定する」など ◇一定期間において、目安となる労働日数、時間数 ・・・例:「1か月〇日程度勤務」、「1週間あたり平均〇時間勤務」など ◇一定期間において、最低限労働する日数、時間数 ・・・例:「1か月〇日以上勤務」、「少なくとも毎週月曜日は勤務する」など
(4)就業規則の規定
労働者の勤務態様や職種によって、始業・終業時刻や休日が異なる場合は、それぞれに始業・終業時刻や休日を規定しなければなりません。よって、シフト制による勤務態様の労働者に関して、就業規則に、単に「個別の労働契約による」、「シフト表による」などの規定だけでは作成義務を果たしたことにはならない、ということになります。この場合は、基本となる始業・終業時刻や休日を規定した上で、「具体的には個別の労働契約で定める」、「具体的にはシフト表による」という規定にします。
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最後に「休日」設定についての相談事例からです。
「うちは原則の週1日以上ではなく、特例の4週4日以上としたい。」という相談をときどき耳にします。
この4週4日ですが、起算日は就業規則等に定めておく必要があります(労働基準法施行規則第12条の2第2項)。
起算日を、例えば2022年1月1日と定めた場合は、その日から4週間を常に区切って休日取得日数を確認していくことになります。
2月、3月、また翌年も10年後も、この起算日から4週4日のサイクルで確認していきます。
当然、4週4日のサイクルと、賃金締め日の月1回のサイクルが異なります。
賃金計算や人事管理の負担を考慮すれば、原則の週1日の休日確保を前提とした働き方改革が賢明です。