年俸制の賃金計算

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年俸制を採用する事業者がいます。年俸額の16分の1を毎月支給、残りの16分の4を年2回に分けて賞与として支給しています。

さてこの場合、平均賃金はどうように算定するのでしょうか。

年俸額が年度当初にすでに決まっており、給与と賞与に分けて支払っていますが、その額はすでに確定しています。この年俸制のことを確定年俸制といい、次のように取り扱います。

2つのことばの法解釈からひも解きます。

1つが「賞与」です。過去の通達に、「「賞与」とは支給額が予め確定されていないものをいい、支給額が確定しているものは「賞与」とみなされない」(S22.9.13.事務次官通達)とあります。よって、年俸額の16分の4を年2回「賞与」の名称で支払っているとしても、労働基準法では賞与とみなされません。

2つ目が平均賃金を算出するための「賃金の総額」です。これも過去の通達に、「算定事由発生時において、労働者が現実に受け、又は受けることが確定した賃金」(S23.8.11.労働基準局長回答)とあり、実際に支払われていない場合であっても、算定事由発生日において債権として確定している賃金に含まれます。

最後に結論です。これも通達です。

 年俸制で毎月払い部分と賞与部分を合計して予め年俸額が確定している場合の賞与部分は(略)「賞与」に該当しない。したがって、賞与部分を含めて当該確定した年俸制を算定の基礎として割増賃金を支払う必要がある。

                           (H12.3.8.労働基準局長回答)

よって、冒頭の事業者においては、この年俸制の方の時間外割増賃金を計算する際には、決定した年俸額の16分の1ではなく12分の1の額から、月平均所定労働時間数で除した額を基礎額として、毎月計算することに留意しなければなりません。