副業・兼業の労働時間管理

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労働基準法には「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」(同第38 条第1項)と規定されています。

その「事業場を異にする場合」の解釈として、「事業主を異にする場合をも含む」と労働基準局長の通達(昭和23年5月14日付基発第769号)があることから、本業と副業・兼業との複数の事業場における労働時間は通算されます。

なお、自営の方など労働基準法が適用されない者や、労働基準法は適用されるが労働時間の規制が適用外となる次の者については、労働時間は通算されません。

①土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業に従事する者

②動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業に従事する者

③事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

④監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

副業・兼業を行う労働者を使用する使用者は、自らの事業場におけるその労働者の労働時間は把握できますが、他の使用者の事業場における労働時間は、その労働者からの申告等により把握した上で、労働時間を通算します。

週の労働時間の起算日又は月の労働時間の起算日が、自らの事業場と他の使用者の事業場とで異なる場合、自らの事業場の労働時間制度における起算日を基にして、そこから起算した各期間における労働時間を通算します。

自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とを通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分が、時間外労働となります。

よって労働時間の申告等や通算管理において、副業・兼業の日数が多い場合や、自らの事業場及び他の使用者の事業場の双方において所定外労働がある場合等においては、使用者、労働者両方の手続上の負担が大きいことがおわかりかと思います。

このため、副業・兼業の場合の労働時間管理について、労働時間の申告等や通算して管理する使用者、労働者双方の手続上の負担を軽減する簡便な労働時間管理の方法「管理モデル」があります。

管理モデルの前提条件や管理方法です。

・労働者の副業・兼業の開始前に、その労働者が時間的に先に労働契約を締結していた使用者(以下「使用者A」とする)の事業場における法定外労働時間と、時間的に後から労働契約を締結した使用者(以下「使用者B」とする)の事業場における労働時間(所定労働時間及び所定外労働時間)とを合計した時間数が、単月100 時間未満、2~6か月の複数月平均80時間以内となる範囲内において、それぞれの使用者の事業場における労働時間の上限を設定し、それぞれの使用者がそれぞれその範囲内で労働させることとすること。

・使用者Aは、自らの事業場における法定外労働時間の労働について、また使用者Bは自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ自らの事業場における36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金を支払うこととすること。

・これにより、使用者A及び使用者Bは、副業・兼業の開始後においては、それぞれあらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働させる限り、他の使用者の事業場における実労働時間の把握を要することなく労働基準法を遵守することが可能となるものとする。

これにより労働時間の通算のための負担が多少なりとも軽減されます。