労災保険は、業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由または通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に関して保険給付を行います。
よって、業務上、通勤途上によって負傷し、病院等で治療を受けるときには健康保険証は使用できません。
あやまって健康保険証を使って治療を受け、診療費を支払ってしまったときは、健康保険から労災保険への切替えの手続きを行います。
まず、治療を受けた病院・薬局等に労働災害であること旨を伝え、これまでに支払った診療費、薬剤費が労災保険への切替えが可能かどうか確認します。
診療報酬請求の締切時期の関係もあり、同月内であれば可能なケースもあります。
労災保険への切替えが可能な場合は、業務災害、複数業務要因災害の場合は「療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書 業務災害用、複数業務要因災害用」、通勤災害の場合は「療養給付たる療養の給付請求書 通勤災害用」に事業主の証明を受けてから、受診した病院に提出します。
切替えによって、支払っていた診療費、薬剤費は返金されます。
一方、労災保険への切替えが不可能な場合は、手続きが複雑です。
まず健康保険の保険者(全国健康保険協会、健康保険組合)に、今回の治療が労働災害であることを申し出ます。
保険者が全国健康保険協会の場合、被災労働者本人宛てに医療費返納通知と納付書が送られてきますので、金融機関で納入します。
なお、病院等の医療機関から診療報酬明細書(レセプト)が健康保険の保険者に届くまで、2~3か月かかるため、納付書が届くまで時間がかかることもあります。
次に、業務災害、複数業務要因災害の場合は「療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書 業務災害用・複数業務要因災害用」「療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書(薬局用)業務災害用・複数業務要因災害用」に、また通勤災害の場合は「療養給付たる療養の費用請求書 通勤災害用」「療養給付たる療養の費用請求書(薬局)通勤災害用」に、事業主と診療した担当医師等の証明を受けます。
この請求書の他、①医療費返納の領収書、②病院等に支払った領収書、③診療報酬明細書を添えて、事業所管轄の労働基準監督署へ提出し、費用を請求します。
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このように健康保険から労災保険の切替え手続きは煩雑です。
労働災害で病院等で治療を受けるときは、必ず労災であることを伝えましょう。
なお、前出しましたが、医療機関等から診療報酬明細書が保険者に届くまで時間を要することから、医療費の返納が完了する前であっても労災保険へ請求することができます。
詳しいことは労働基準監督署までお願いします。