新型コロナウイルス感染症 法律上の分類

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感染症は、感染症予防法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)第6条で、「一類感染症」、「二類感染症」、「三類感染症」、「四類感染症」、「五類感染症」、「新型インフルエンザ等感染症」、「指定感染症」および「新感染症」に分類し、定義付けしています。

新型コロナウイルス感染症は、この中の「新型インフルエンザ等感染症」に属しています(同条第7項第3号)。

この分類を季節性インフルエンザと同じ「五類感染症」へ移行しようと、政府は検討に入りました。

では「五類感染症」に類型が移行されたとき、何が変わるのでしょうか。

新型コロナウイルスは現在、「新型インフルエンザ等感染症」に基づき、病院での発熱外来、入院での検査費や治療費、あるいはワクチン接種は、全て公費による負担で自己負担はありません。

季節性インフルエンザなどの「五類感染症」は、医療費は本人の保険診療であり、ワクチン予防接種も原則自己負担です。

また、この他就業に関わることとして就業制限があります。

「新型インフルエンザ等感染症」は、感染症予防法第18条により、都道府県知事が就業制限の通知をします。事業者が就業禁止を判断するものではありませんので、労働基準法第26条に定める休業手当の支払いは不要です。

一方、五類感染症には同様の規定はありません。休業手当の支払いは必要になるのでしょうか。

労働安全衛生法第68条に

「事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかつた労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない。」

と規定があり、その厚生労働省令(労働安全衛生規則第61条第2項)には

「事業者は、(略)就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、産業医その他専門の医師の意見をきかなければならない。」

と定められています。

これらの法令と、休業手当の支払いが必要かどうかの関連についてです。

例えば、労働者やその同居の家族などが五類感染症の疾病に罹患したとしましょう。

労働者自ら事業者に対して「休ませてください」と申し出た場合は、休業手当の支払いは不要です。

そのような申し出がなく、事業者が安全配慮義務(労働契約法第5条)により職場の感染リスクを防止するため、事業者から労働者に対し休業を命じた場合には、休業手当の支払いが必要です。

このように、従業員等が季節性インフルエンザにかかり、従業員から公休取得の意思表示があった場合は、休業手当の支払いは不要ですが、事業者が感染予防のため、その従業員に対して休業を命ずる場合には、休業手当の支払いが必要となります。

新型コロナウイルス感染症が、「新型インフルエンザ等感染症」から「五類感染症」へ分類移行したときには、上述の「季節性インフルエンザ」の語句を「新型コロナウイルス」に読み替え、同じように対応していくことになります。

分類移行の結果に関わらず、労働安全衛生法による病者の就業禁止については、事業者が休業を判断することとなるため、事前に就業規則に規定し、出勤停止とする根拠としておく必要があります。